低飛空の出逢い

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「ーーちょっとした問題があります。4つのエンジンすべてが停止しました」 え? 再びアナウンスが流れたのは最初のアナウンス以来、約六分後だった。 とてつもなく体中が震え始める。見渡してみると乗客等は天に祈りを捧げていた。 「祈ってください」 三回目のアナウンスはもはや投げやりだった。機長は一体どんな顔をしてアナウンスしているのだろう。 映画ならミラクルな展開が起こるはずだ。あえて俺は祈らなかった。 祈りが上手くいくとは限らないからだ。 沢渡柳のいい匂いがリラックス効果を生み、恐怖に打ち勝てる気がしてくる。 なんて、絶体絶命の状況に陥っているというのに…。 「私たちの生存は皆様の協力にかかっています」 四回目のアナウンスはやや呂律が回っていなく、機長が祈れよとつっこみたくなる。 無事に着陸した際はスタンディングオベーションを起こしてくれ。
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