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「そんな、俺なんかまだまだですよ」
上司に褒められた相手、それは他部署からも通称“王子”として人気を集めている松原 透。
甘いルックスを持つ彼は日頃から笑顔を絶やさない爽やかなイケメンである。
背は百八十センチ近くあり、全体的にスラッとして細身である彼はとにかくよく働く。
まだ歳は二十六のはずだ、上司が褒めるのも頷ける。
「実は新事業を立ち上げようか考えていてな、ぜひその案を松原に任せたいと思っているんだ。
この会社をより良くするため、松原のような若者の経験や活躍も必要だからな」
うんうんと何度も頷く上司だったけれど、それどころではない。
思わずガタッと大きな音を立てて、勢いよく立ち上がってしまう。
新事業の発案を彼の上司である私ではなく、二十六の松原透にやらせる───?
なんだか負けた気分になる。
何これ、悔しすぎる。
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