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序曲
脇腹が熱い。ナイフで刺された場所が、焼けた鉄を当てられたように。
どくん、どくん、と脈動が全身を揺らしている。
目が捉える月は曖昧。輪郭が揺らぐ。
耳に僕を呼ぶ声が届く。ノックス、と。
意識は沼に沈み込むように。夜に拡散していく。
どくん……、どくん……、と脈動は掠れていく。
熱が引き、冷えていく、消えていく感覚。
『夜龍』の唸り声を聞いた気がした。
脳裏の闇に溶け込む巨大な黒龍。
見上げる程の巨体から、熱を感じる。
唸り声が、言葉として伝わる。
「お前に、私の故郷を探してもらう」
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