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キャロルの講演は日暮れまで続いた。辺りが暗くなってようやく時間の経過に気付いたようだ。
「すっかり遅くなってしまった。悪かったね。両親が心配している頃だろう」
彼女は乱雑に広げた荷物をまとめている。
バーニアはいつの間にか寝ていた。片付ける音で目覚めたようで、バッグの傍であくびをしている。
様々な龍の話を聞いた。双子龍は見た目は全く同じだが、性格が大きく違うこと。森の中の小型龍の生態を守っていること。
海の近くに住む青い蛇龍。険しい山に住む赤い飛竜。彼らの生態、性格。
そして未だ不明な「龍の起源」を探していると。
龍の起源……。それは生命の起源であるとキャロルは言った。夜龍の存在に疑問を持つ僕としては気になる話だ。それに他の龍のことも、実際に見てみたい。僕の中の龍といえば、夜龍のように大人しいものだ。しかし荒くれものもいるらしい。狡猾に人間を利用するものまでいるという。
「やっぱり……村から出たいな」
僕の呟きに、キャロルは手を止める。
「できないのか?」
「だって……この村には僕が必要なんだ」
「それは君が決めたことだ」
キャロルは微笑んでこちらを見る。
「もし、子供だからとか、ひとりは危ないとか、家族と離れるのが寂しいとか言うのなら、それも全て、君が作った理由だ」
グレーの瞳は何もかも見透かすようで、僕は目を逸らした。夜龍を見上げる。彼も見上げていた。星が瞬き、月が傾く夜空を、じっと。
キャロルはバッグに書類を詰め終わったようだ。
「さあ、帰ろう」
家の手伝いもせずご飯にも帰って来なかったのでかなり怒られた。しかも不審な研究家と一緒だったのだから。彼女も注意を受けていた。彼女は悪くないと弁護したが意味はないだろう。
妹は無邪気に何の話をしたのか尋ねてきた。面倒ながらも、僕はキャロルから聞いた龍の話を妹にした。淡々と話していたつもりで、途中から熱が入ってしまった。
未知の龍! 村の外!
妹と一緒に部屋で騒いでいたらまた怒られた。
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