行進曲

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行進曲

 静かな森を進み、山の頂上へ着いた。  眼下に広がる街。僕の憧れだ。  煉瓦造りの家は輝いているし、石畳を歩くと小気味良くて足取りが軽くなってしまう。  村長の命を受けて、必要なものを買いに何人かで。半年に一度行けるか行けないか。  そんな遠い存在だった街も、今の僕には通過点だと思うと不思議だ。  道中、バーニアはずっと無言で歩いていた。鱗を隠すためにマフラーで口元を覆っているのが、話さないという意志に感じる。僕も話しかけづらくて、出来る限り考え事をしていた。  夜龍の故郷。キャロルは『龍の起源』と関係がありそうだと言っていた。ただ龍が生まれた場所とは違うのだろうか。  それに、キャロルは自身が龍なのに龍の研究をしているのは何故だろう?詳しく聞きそびれた。  僕の中にある夜龍の力も何なのか。  バーニアのことも全く知らない。  考え事を思い出して、山頂で感慨にふけっていたら、バーニアはさっさと歩いていってしまった。 「バーニア、ちょっと休憩しない?」  準備もなしに山登りをしたのだ。僕は弱った声でバーニアに提案した。彼女は振り向くこともなく歩き去る。 「バーニア!」  再び呼び掛けると、バーニアは振り返って僕を睨んだ。 「キャロルが……いたから……言わなかった……。私は……人間が……嫌い……だ」
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