いなくなったピピちゃん

5/7
前へ
/7ページ
次へ
「ただいま……」  台所で母さんを見つけては挨拶をする。 「あ、おかえり拓也」  真っ先に僕は知りたいことを母さんに聞く。 「ね、ねぇ、母さん。ピピちゃんは見つかった?」  母さんはその言葉に、僕から目を逸らして答えた。 「ごめんね……。見つけられなかったわ……」 「そんな……」  頼みの綱だった母さんまでも、ピピちゃんを見つけられなかった。  僕は膝を付いて落胆する。そして、 「ううっ……ひぐっ。うあああああああん!!」  今まで抑えてきたものが溢れ出てきてしまったのだった。 「拓也……」  母さんはそんな僕をギュっと抱きしめてくれる。  僕はただ涙を流すことしか出来なかった。  しばらく泣いて泣いて泣きまくって、落ち着きを取り戻したら、僕はピピちゃんの鳥籠がある自分の部屋に向かった。  嫌だなぁ。ピピちゃんのいない鳥籠、見たくないなぁ。  そんなことを思いながら、僕はドアノブを引いて自分の部屋へと入って行く。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加