真っ白に生まれ変わって

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俺はやはり、「転生」していた。 前世の記憶。 前々世の記憶。 前前々世の記憶。 あやふやに、しかし、しっかりと覚えている。 人の命の重みも。 権力の醜さも。 全て生々しいほど、明確に覚えている。 自分の無力さが嫌になった俺は、空を見上げた。 空は厚い雲が覆っており、お天道様の光すら届かない。 砂埃が舞い、人の悲鳴や馬の嘶き、全てが倒錯した悲しい世界であった。 --俺はこんな世界を望んだわけじゃない。 こんな風に生きていきたいと思ったわけじゃない。 きっとみんな、こんなことがしたいわけじゃない。 どうして人が人を傷つけ、同じ血の流れるもの同士が痛いほどまでにこんな戦いを繰り広げなきゃいけないのか。 一体何が間違っていると言うんだ? そして俺に何ができると言うんだ? 俺は右手で拳を作ると、強く握り締めた。 今回俺が転生した場所は、暴君の陣地に意外と近い場所であった。 陣地の手前だというのに守るはずの兵士の姿はまばらで、すぐ前にはあの暴君が見える。 「ほお、小僧。何の用だ?」 暴君は演技がかったセリフをのこのこと吐いた。 「お前を、殺しに来た」 そんな暴君を冷ややかな目で見た俺は、右手に持った刀を握り直した。 "前へ進め" 俺の意思を汲み取ったような力強い声は、頭の中で何度も反芻する。 --わかってるさ、それぐらい。 俺は笑った。 今まで繰り返してきたすべてを、今ここで終わらせるんだ。 ゆっくりと一歩を踏み出した俺は、奴の陣地に入るといつかの兵士たちのように「ナル!」と叫んだ。 途端に俺の体は金色の光に包まれると、くすんだ何とも言えない色の鎧は金色へと姿を変える。 「?!」 さすがの暴君も驚いたのか、「ま、待て!」と慌てて後ずさりした。 「もう遅い。お前が今まで犯した罪をよく考えるんだな」 「謀反者だー!出会え。出会え!!」 必死にそう叫んだ暴君の声に呼応するものは、もはや誰1人としていなかった。 俺は今までのすべての怒りを込めて、刀を構える。 その時。 「図に乗るな」 聞き覚えのある声がした。 まるで俺の盾になるかのように、暴君と俺の間に金色の兵士が舞い降りた。 「じいさん!」 俺は、本当にあの時のじいさんかと思うほど若々しく見える老人に会えたことに喜びを感じ、歓声を上げた。 「よくやったぞ。さて、われわれは賢王の軍としてこの暴君を成敗する。賢王の軍として散る覚悟はいいか?」 老人の声は以前とは打って変わってはつらつとしており、年齢を感じさせない若さが見て取れる。 俺は老人への尊敬と、暴君への憎しみを込めて、大きく「はいっ!」と返事をした。 ※ 「王手!」 ここは小学校の教室。 休み時間となったこの室内には、熱心に将棋に励む子どもたちがいた。 その中の1局。 ついに陣形を崩されて追い込まれた玉将は、成金を背に置いた金将で、あえなく「詰み」となった。 -fin-
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