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夜のバス
「半魚人と人魚の夜R」
◆夜のバス
夜のバスがガタガタと揺れている。道が未舗装のせいだ。
その揺れで、かなり遠く、そして、田舎まで来たと思われる。
バスが上下左右にと乱暴に揺れ、俺の頭や体も揺さぶられているのに、他の乗客は平気な顔をしている。
気のせいかもしれないが、乗客の体が揺れていないように見える。つまり、バスの揺れに乗客の体が順応している・・そんな風にも見えた。当然、俺の横の男も慣れているようだ。さっきから平気な顔で雑誌を読んでいる。
更におかしいのは、時間だ。こんな遅い時間にバスが運行しているはずがない。
俺は、そんな時間にバスに乗った。夜行バスではなく、ただの路線バスだ。
決して旅に出たのではない。
俺は自分の住んでいる町を抜け出したかっただけだ。
今夜、俺は同居していた女と別れた。
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