銭湯

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 そして、横の男に目をやると、水かきのような足を大事そうに洗っている。  それは人間のものではなく・・魚人のものだ。  それは俺にだってわかる。これまで魚人という異人種は見たことはないが、 確実に、男は魚人だとわかる。  なぜなら、男の尻の辺りから、ふくらはぎ、そして、足先まで、  ウロコに覆われているのだから・・  鱗と言っても、肌色に溶け込むような薄い色のものだ。湯煙りの中だと、気づかない程度のものだ。  だが、鱗は鱗だ。普通の人間には鱗などない。  異常なこともここまで続くと、さすがに堪えられなくなってくる。  もう限界だ。  風呂場で若返る老人たちに、水かきを持つ鱗の生えた人間・・いや、魚人たち。  それに、この湯、熱いはずのぬるい湯。  おかしなことばかりだ。  こんなぬるいシャワーを浴びても体が温もりもしないし、湯船でも俺の体を温めることはできない。  もうここから出よう。
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