152人が本棚に入れています
本棚に追加
/531ページ
窓の外・・いつまでも海は見えてこない。そう思いながら、
海か・・
このバスが海に向かっているのなら、そこまで行ってみるとするか。
海辺の町に宿があるのか、どうかわからないが、他に行く当てもない。
「海」という言葉を聞いただけで、海鳴りが聞こえてくるような気がした。俺の住んでいた町には海は無かった。実家には山と海があったが、今の家には山すらない。
海まであと、どれくらい停車するのかわからないが、進むにつれ、客数は減ってきた。後ろの方に年配の客が数人。通路の反対側にさっきの男。
前の方に、二人ほど。ハッキリ言えるのは、若い人間がいないということだ。こんな時間だ。当然、子供は乗っていない。
話し声も聞こえないということは、互いに知り合いではないということか。
少し眠ろう・・
することもないし、退屈だ。窓の外は人家の灯りくらいしか見えない。
俺は寝る体勢に入った。終点まで乗るのだから寝てもかまわないだろう。
こんなに揺れていては眠れない・・そんな危惧は全くなかった。おそらく疲れていたのだ。目を閉じると、すぐに深い眠りに落ちていった。
最初のコメントを投稿しよう!