人魚との交流

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 人魚が「ちがうの」と直接言ってきたのは、  風呂に人魚を浸ければ少女の体が大人になるというのは、人魚にとって変なことだったようだ。どうやら俺の厭らしい想像が見抜かれたらしい。 では? オフロ、そして、アシとは? どういう意味だ。 「私の足が二本になるの・・」  小さく可愛い声が頭の中に届いた。  足が二本って・・当たり前だ、と思うところだったが、 「湯船に体を浸けると、その魚の下半身が、人間のように二本足になる・・そういうことなのか?」 「そうよ・・」  透き通るような声が返ってきた。  そんな話を童話で読んだことがある。  だが、「お風呂で二本足に・・」ではなかった気がするぞ。それに、海の水に浸かって、二本足になる方が合理的な気がする。だが、それだと、人魚は海の中でずっと二本足ということになる。それも変だ。  いずれにせよ、  私を銭湯に連れていけ・・そういうことなんだな。  どうしてまた、そんな面倒くさいことを・・  だが、もし本当に二本足になって、この子が歩けるのなら、リヤカーに乗せる必要もなくなるな。その方が断然いいに決まっている。  さっきのように魚人のメスに出会っても、二本足なら逃げることが可能だ。素早く行動できる。 「窮屈だが、しばらく我慢してくれ」  俺は、そう言って、  人魚の少女をお姫様抱っこから、再びリヤカーの中に戻した。  人魚は抗うことなくリヤカーに可愛らしく収まり、  俺のかけた上着の裾をギュッと握って顔まで引き上げた。
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