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すると人魚はこう説明した。
「私たちはイツワリの『絵』を見せることができるの」
「絵?」
「エイゾウともいうわ」
「偽りの映像・・か」
「他者に違う姿の私を見せることができるの・・」
人魚を見る側の視覚に、ある種の錯覚を与えることができる。
茂みに辿り着くまでは、人魚は魚人どもに人間の少女に見えていた。だが人魚は力尽き、虚像を見せる力は失われた。
つまり、発見した俺の目には、本来の人魚の姿に見えたということだった。
それにしても・・魚人のメスは、別れた女の姿になるし、人魚は服を着ているようにも見せることが出来るし、もしかすると海の生物は人間より優れているんじゃないか?
以上が幼い人魚の真夜中の長い道程だった。
まだまだ知りたいことが山ほどあるが、今は、人魚を風呂に入れてあげるのが先だ。
俺と人魚の前に温泉の湯気が立ち上っている。
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