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「ゆ」
◆「ゆ」
バスは、いくつかの駅に停車した後、「次は、終点・・」というアナウンスが流れた。
俺は、バスの中の異臭から逃れるように、バスから降りた。
小さな老婆も運転手に挨拶しながら、軽い身のこなしで降りていく。
同じようにバスを降りた数人の人たちは、それぞれの道を歩き出した。おそらく帰宅だろう。だが、俺には行く当てもない。
俺は、何かから逃げているのか。同居していた女からなのか。現在の生活からなのか。
自分の心が上手く掴めない。
自分のことが分からないのだから、ここがどこなのか、分かるはずもない。
俺が着いた場所・・まるで、どこかの異界に紛れ込んだかのようだ、
ここは、俺が住んでいた日常とはかけ離れた世界だ。
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