四月

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 俺の場合はたまたま、中学三年の時の担任がこの学校の卒業生(一般受験枠)だったため口利きをしてくれて、入学することになった。  あの家を出るのは俺にとって幸か不幸かわからないけど、とりあえずあの父から離れられ、世話にならずに済んでいるのはありがたかった。  なぜなら、一般受験枠の授業料が免除になるのに対して、特待生の俺達は授業料どころか生活にかかる半分を学校側が負担する。  寮費も食費もだ。  海外への修学旅行費も、日用品も全て。  過度の使用は禁止されてるが元々持たない俺達は基本、金の使い方が分からない。  だからなのか、あまり強くは言われてはいない。  また、特待生にはパトロンがつき、学校側が負担しきれなかった分の費用と生活を始めるうえで必要な物の初期投資をしてくれる。下着や私服や靴など、学校に通うのに必要の無いものを。とは言え芸術的センスも無く将来有望でもない俺達には、パトロンに出してもらった金額の十分の一も返すアテなどないのだが、身体で支払う訳でもないらしい。  慈善事業の一環なんだそうだ。  返金の義務は一切ない。  もちろん、パトロンのご子息も生徒として学校にいる場合もあるのだから挨拶はしなくてはいけないし、小さな仕事を貰ったりもする。・・・らしい。  これからの事なので分からないことばかりだけど。  それでも、行動の一つ一つをあげ連ねて罵声をあびたり、声を出すだけで受ける暴力が無いだけマシなのだ。
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