四月

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 この学校は、一時限目が七時三十分から始まり、五分の休憩二回挟んで1時間半の授業を三時限受けたあと二時間の昼休憩になる。  その後、四時限目を受けて その後は、自由時間。  部活動はなく、一年生の俺達にはまだ受けられる講習会なども少ないので、放課後は教科毎に設けられている教科担任室で二十時まで待機している教師に、解らないところを聞きに行ったり、体育という教科がないので体育館で体を動かしたりしてもいい。  学校が閉まるのは二十時半で、寮の門限は九時。遅くなる場合は寮監に連絡をすること。  入学式後に、持ち上がり組と一般受験枠の組、そして特待生の俺達はそれぞれ別に説明会を設けられ、そんな事やこれからの話を聞かされる。  この説明会で、俺達は自分のパトロンを知る。  今年度の特待生が集められたのは、寮の一階にある談話室。  特別広いわけでも極端に狭いわけでもない、応接室のような部屋。  今日会ったばかりの、お互いの名前も知らない俺達は誰もなにも話さず、時間だけが静かに過ぎていく。  しばらくした後に入ってきたのは、誰かの父親だろう人が2人と俺達と同じ制服を来た人が2人。  まずは、俺達が自己紹介をする。  みんな背が低く痩せていて、目が虚ろだった。声も小さく、たどたどしいので聞きづらい。多分俺もそうなんだと思う。  みんな今日が入寮日で、ここの制服を受け取っていない俺達は、まだ中学の制服で入学式に出席した。それだって後ろの方で小さくなっていた。  それぞれに自己紹介をする中、ずっと俺を見ている人がいた。  制服を着た、背の高い男の人だ。  黒髪の柔らかい感じがする、優しそうな人。 「相澤真澄(あいざわ ますみ)と申します。篠田直(しのだ なお)くんを、支えていきたと思ってます」  耳に心地良い声でそう挨拶して、フワッと笑った彼を直視することが出来なかった。それなのに、目が離せない。
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