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息子がいなくなった
ある日、近所に住む松子さんが道端をうろついていた。きょろきょろ見渡していて様子がおかしい。気になって声を掛けた。
「あの子が、太郎がいなくなったのよ」
松子さんは大きな声で言った。
「まあ大変、私も探します!」
「ありがとう。どこに行ったのかしら……あの子、目を話すとすぐにいなくなるから……太郎ー! 太郎ー! もうすぐご飯だから帰ってらっしゃい!」
3日後、息子さんは水死体で見つかった。川に行って溺死してしまったようだ。
「おお、太郎、まだ80歳なのに認知症なんてかわいそうに」
太郎さんの葬式で、松子さんはおいおい泣いていた。
母親の松子さんは100歳だ。しかし頭も足腰もしっかりしている。長生きというのも少し気の毒だなと思った。
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