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一、
「僕は高橋陸。
二〇〇九年、僕はメジャー契約や住居探しの為、アメリカに旅立った。
しかし、僕の乗った飛行機は、アラスカ沖に墜落したんだ…。」
一九四四年一一月二日、アラスカ
「僕は、目を覚ますと知らない風景が広がっていた。
確か飛行機が傾き激しい衝撃で痛みを感じたはずだが…
飛行機事故で確か墜落しそうになったはずだが飛行機の墜落した形跡が全くない。
いったい、どうなったんだ…。
明美、明美は、何処にいるんだ。
それに、乗っていた乗客も誰もいない。
そして、ここは何処?寒い…何だ!これは…
何で……???僕、兵隊みたいな服着てるんだ???」
自分の着てる兵隊みたいな服を覗いたら、胸ポケットの所に名前が書いてある欄があった。
そこには、高橋和則と書いていた。
「も、も、もしかして、おじいちゃん?
おじいちゃんの体に僕の脳が入ったって事……?」
「あっ痛っ…誰だ!お前は……。
俺の体で誰か喋っている……。
気持ち悪い!」
「しかし、寒い…ここは、何処だ。
そう言えば、私は戦闘機でアメリカの航空母艦と激突したはずだが……
しかし、あれは太平洋沖だったはず…。
何故、私は生きてる?」
「おじいちゃんにまた逢えたよ!
おじいちゃん、元気だった?」
しかし、おじいちゃんは、僕と過ごした事を全く、覚えていなかった。
ただただ、気持ち悪がっているだけだ。
僕は、おじいちゃんを落ち着かせようとしたが、おじいちゃんは聞く耳を持たず、寒さと意味の分からない気持ち悪さでブルブルと怯えていた。
僕は、それでも話し続けた。
おじいちゃんと過ごした三年間の思い出を話したが、それでも両手で耳を塞いだ状態だ。
「おじいちゃん、やっぱり変わってないね!僕の、おばあちゃんは、春江だよ。
そして僕のお父さんは、義男」
「何故、そんな事まで知っている……。
全く意味が分からない……。
俺の脳味噌に孫が入り込んだって……。
だから、俺が考えてない事を、勝手に喋っているのか?
お前の名前は何だ?」
「僕の名前は、高橋陸。」
「一緒の名字だな…」
「そりゃそうだよ。おじいちゃんの孫なんだから!」
「俺は、太平洋沖で特攻隊で死んだのか?」
「いやっ、おじいちゃんは生きてるよ。
どうも、死んだのは僕みたい…。
おじいちゃんの体に入り込んだみたいだよ。
あの時の僕のように……。」
「あの時って?
さっき、言ってた未来の孫の体に私が入り込んだって話か…。」
「おじいちゃん、ちゃんと聞いてたんだね!」
「耳を塞いでも、自分の体だから、全て聞こえてたよ。」
「そうだよね。なるほど!」
「しかし、不思議過ぎる話だ。
陸だったけ?俺と陸は、今は同じ歳か?
そして、一緒の命日。」
「だけど、何回も言うけど、おじいちゃんは死んでないんだって!」
「もう、意味が全く分からん!」
そして、僕とおじいちゃんの、又々、奇妙で摩訶不思議な生活が始まった。
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