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壱
「これから魏軍野営地へ奇襲をかける。
三日間の無音軍行をよくがんばってくれた。
しかしここからが本番だ。
騎馬は杯を取り雑兵を無視して公孫喜大将軍の陣幕を狙え。
歩兵は我と一団となって目の前の敵を殲滅しながら同じく陣幕を目指す。
敵は朝支度の最中で武装もほとんどしてないだろうが、10万の兵を2万で襲うのだ。
敵に情けなどかけずに殺する事だけを考えよ」
白起は兵車の上から声を抑えながら檄を飛ばした。
兵たちは疲れからか少し重い雰囲気を出していたが無言で武器を掲げ目を吊り上げた。
「王京、新城で守りを固めている向寿将軍にはちゃんと連絡してあるな」
「もちろんです。
信じてはない様でしたが…」
馬を一歩前に出した王京は槍の具合を見ながら答えた。
「確信がないのはオレだっておんなじだ。
だか24万もの魏韓周の連合軍を止めるにはここ伊闕の奇襲以外にない」
そういうと白起はゆっくり前進し声を張りつつも静かに号令をかけた。
「ではいざ突撃」
それを受け王京と蒙布が先行して軍馬を走らせた。
「蒙布よ、走りすぎるなよ」
槍の石突で軽く横腹を突かれた蒙布は歯を見せ王京に叫いた。
「オレにそれ以外の何を求める?」
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