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占い師
「Bランクになったんだから俺もジョブにつきたい…!」
「ああ…そうですね。向かいましょう…通り道デスノデ、天使軍の本拠地の様子も見ナガラ…」
俺はべリアルに続いて森に入った。
草をかき分けながら、森を進む…。この森は、白とライトグレーと、ダークグレーで出来ている。通称、モノクロの森。灰色の草むらに白い花が浮かんでいる。灰色ウサギと白ウサギが黒い目でこちらを見ている。
ガサガサっと音がして、黒髪のセクシーな女が、修道女の格好をした金髪の女を連れて出て来た。黒髪の女は、長い髪をかきあげながら言った。
「ふん、やっと見つけたわ。森の中とは…逃げまわるのに必死なのかしら?」
「…お知り合いデスカ?」
「ああ…確か魔王の手下で、変身できる…」
黒髪の女、インヴィはベリアルを指差して怒っていた。
「忘れたとは言わせないわ!インヴィよ、ベリアル!あんたは一生許さないんだから」
「…ああ、ワタシの知り合い?」
俺は戸惑った。
「ベルアルさ、悪魔軍に恨み勝ってない?」
「あー…過去をひきずる女って、未練たらしいデスヨネ」
インヴィはさらに怒った。
「ふざけんじゃないわよ!ベルフェゴールもベルゼブブも、マーモンもあんたが殺したんじゃない!おかげで魔王軍トップの7分の3が欠落!権威も失墜!立て直すのがどれだけ大変だったか!」
「え…?」
俺はベリアルを見た。ベリアルはそっぽを向いていた。インヴィは怒っている。
「なんとか言いなさいよ!」
「ああ…。ほら、ジョブもったら、色々試したくなるじゃないデスカ。思ったより弱かったというか…失礼、アタシらの加減が足りなくって…手加減するって初心者には難しいデスヨネ…」
「はーらーたーつーーー!」
怒ったインヴィはこちらにバトルを仕掛けて来た。2対2。
足下に四角いチェス盤が敷かれ、フィールドの外側には宙にはチェスの駒が舞う。
「初心者君には悪いけど、私の復讐に付き合ってもらうわよ!こっちは占い師2人!あんたはジョブもない初心者がペア!私たちの勝ちは目に見えてるわ!」
ベリアルが金のメガネを拭きながら言った。アビリティによりベリアルの先制は決まっているので、余裕があるのだろう。
「おや、占い師に転職したんデスカ」
「そうよ!悔しいけど、やっぱり占い師は強いわ!メタルにふっていたジョブスキルを全部なくして、一から占い師として、コツコツ経験値をためたのよ!」
「ほうほう。ご苦労デスネ。ふむ。マックスまでジョブスキルを溜めたヨウデ。」
「ふふん!いくら最強と名高いあんたとはいえ、ペアがジョブなしなら、負けないわよ!」
俺は焦った。
「おい、これどーすんだよ」
「ダイジョーブダイジョーブ…。こちらが勝ちます」
「ムッカーーー!」
ベリアルは金の眼鏡をかけながら、つぶやくように言った。
「ギリギリですけどね、カードひいて、死神と教皇がくればそっちは1人、落ちるわけですし」
「そんな都合良くいくもんですか!」
インヴィの怒鳴り声をよそに、ベリアルは俺のターンを使ってカードを2枚ひいた。そのカードには、「死神」と「教皇」と書いてあった。
「キタキタ。さあて、レイリくん、インヴィのペアから攻撃してクダサイネ?向こうはセカンドアビリティを失くしてジョブを強化している気がシマス。」
俺は、強化されたアビリティ・一撃必殺で修道女の方を倒した。これで2対1。インヴィは唇を噛みながら、攻撃をしかけてきた。一枚ひいたタロットには「隠者」と書いてあった。
「次は私のターンよ!ベリアルを攻撃!」
「レイリくん守って?」
「ええ?」
ガキン!と音がして、俺は闇の攻撃をはじいた。
「教皇のカードがかかったプレイヤーは次のターンで死なないんデス」
「こちらのターン…TOWER 1枚で十分…」
そう言ってベリアルがひいたカードには「塔」と書いてあった。
「これであなたの動きを封じます。さ。レイリ君、とどめですよ。」
-剣の一撃-
インヴィは大分HPが減ったようだが、まだ戦える状況だった。一撃必殺は発動しなかったらしい。
「まだ息がありましタカ…やれやれ、たまに一撃必殺ってのは使い勝手が悪いデスネ。でもTOWERの効果で動けまセンネ?」
インヴィがベリアルを指差して、怯えるように言う。
「イカサマよ!そんな都合よく欲しいカードが次から次へと来るわけない!」
ベリアルが剣を持って、占い師のところへ言って、耳打ちした。
「あまりデカい声出さないでくださいよ。バレるとマズいんですから…」
ベリアルは雷の糸で縛られているインヴィを、剣で切った。
WIN-白の軍 LOSE-黒の軍
俺はベリアルの言葉をはっきり聞いていたが、あえて、何も聞いていない振りをした。嘘つきってのは、嘘がバレると、何をしてくるかわからないものだ。
だから、あえて、知らない振りをしておくのがいいと思ったのだ。
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