アルケミスト

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アルケミスト

目的の丘についたとき、ベリアルは座って、オペラグラスをかけた。ここからは天使軍の本拠地である、聖地・ホーリータウンがよく見える。 「さて、偵察しマスカ」 「何がみえるんだ?」 「天使軍の動きデスヨ。そろそろゲームマスターが見かねて、救済措置をするころデスカラ。…ハイ」 ベリアルは使っていたオペラグラスを手渡してきた。 「あなたも見たいデショ?」 街から白い制服を着た人たちが列になって歩いている。どこに向かっているんだろう? 「新ジョブ解放デスネ」 横を見ると、ベリアルは望遠鏡で町入り口を見ていた。 「おそらく天使軍専用ジョブ。悪魔軍に有利に戦えるジョブでしょう。光の戦士とか…そんなんデスカネ?」 「じゃあ俺はそのジョブになれば…」 「悪魔軍へも、闇の戦士とか、そんなジョブが解放されるんでしょうね」 「おい!俺もジョブがほしい!」 ベリアルは面倒そうに俺をみた。 「まだ様子見デスヨ…光の戦士がどんな技もっているか見たいデスシ」 俺は迷ったが、ベリアルに聞いてみることにした。 「それより、さっきの説明しろよ」 「ああ、占い師?」 俺は舌打ちした。どうせこいつは、確信に触れることを答える気はないのだ。 「占い師なんてジョブ、ギルドの看板になかったぞ!」 「ええ、ないですよ」 ベリアルは白い手袋をした右手で、数を数えるようにしながら説明した。 「ファイア、ウォータ、ウッディ、ゴーレム、メタル。これがゲームの始まりからある基本職。それだけじゃつまなんないってので、ゲーム参加者からジョブクリエイターを募り、エルフ、ドワーフ、占い師、踊り子、遊び人なんかのジョブが生まれた。それらは、ギルドではなく、フィールドに隠された指定の条件をクリアすることで解放される…。アナタ、知らなかったんデスカ?」 「しょうがないだろ!初心者なんだから!!!」 「ふうん…」 ベリアルがまた黙ったので、俺は食い下がった。 「あんたは占い師ってことか?」 「うーん?当たらずとも遠からずってトコですかね?」 「それで、ロキは?」 「うん?」 「あんたのロキが組んでたってことは、ロキもランカーで、ジョブをもってたんだろ?なんのジョブだったんだよ」 ベリアルは黙った。ベリアルとロキが組んでいたのは勘だが、どうやら当たったらしい。そう、ロキは初めからゲームに慣れていた。 「うーん…」 「おい、ごまかすなよ」 「錬金術師に近いけど、その更に上級職……アルケミスト…デスヨ」 次の瞬間、景色が変わった。白かった雲はダークグレーに。グレーの木の葉は真っ黒に。 「なんだ?」 「ダイジョーブダイジョーブ。予測の範囲内デス」 「うん?前にもこんなことがあったってことか?」 「あるわけないデショ。こんなこと」 俺は馬鹿にされたような気になって、口を尖らせた。それを見て見ぬ振りして、ベリアルは喋る。 「魔王ルシファーにアルケミストが渡ったんだから、世界全体に干渉されることくらい予測できマスヨ。何が起こっても不思議じゃない」 「その…アルケミストってなんだよ」 「パウロ・コエーリョのアルケミストを読んだことは?」 俺が答えに困っていると、ベリアルは続けた。 「森羅万象の理を理解し、それに干渉する、例えるなら世界の王…そんな専門職が魔王の部下になっちゃったのは厄介デスネエ。」
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