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ジョブ
「さて、レイリ君のジョブ、なににしましょウカ。一度選んだら基本的にはやり直せないから、慎重に決めないと」
ベリアルはタロットを上から下にパラパラと流した。
「…なにがあるんだ?」
「いやデスネ。すでにある職なんて、魔王が対策済みデスヨ。だから、新しいジョブを作るの。これ決定」
「げえ」
ベリアルはタロットを7枚並べて真ん中のタロットをめくった。「星」と書いてある。
「まずは、目的をちゃんと決めマショ?」
「目的ったって」
「目的は大事デスヨ。一見困難に見えるような目標を立てようとも、それに立ち向かい、達成するための手順を考えることこそが、創造性デス。この虚飾のベリアルが、その手順をちゃーんと考えて差し上げますカラ、ちゃんと目的を決めマショウ」
俺は考え込んだ。俺は何を達成したいんだろう…。実現可能かどうかを度外視して、成し遂げたいこと…。
「ま、目的は決まってるんですケドネ。ロキと君を2人合わせてドロップアウトさせマショウ。」
「え?」
「はじめは君を最初にドロップアウトさせて、アタシが魔王と刺し違えてでもロキを取り戻そうと思ったんですケド、君が折れないので、君の意思を尊重して共に戦っているわけデス」
ベリアルは右のタロットをめくった。そのタロットには「教皇」と書いてあった。タロットを全て山に戻し、束にして俺の前に差し出した。
「こちらが、アタシの手札、全22種類。これと被らない能力をもつジョブがいいデスネ」
俺は、そのカードを一枚一枚見ながら言った。
「あのさ」
「なんでしょう?質問にはなんでも答えマスヨ」
「目的が俺とロキのドロップアウトって…」
ベリアルは白黒チェックの帽子を脱ぎ、左手でくるくると回した。ショートボブの銀の髪がロキと良く似ている。斜めに切られた前髪も、鏡合わせのようにそっくりだ。
「ああ。ロキも、ジョブ能力がチートすぎて、世界から排除される恐れがありましたカラネ。排除される前に、ドロップアウトさせたいなあって常々思ってたんです。平民として、戦わずに生きるのもいいじゃないデスカ」
「いや、そうじゃなくて、おまえはどうするんだよ」
「アタシ?まあ、なんとかごまかして生きて来ましたが、年貢の納めどきってのは必ず来るものですカラ…」
「俺とあんたと、ロキと、3人でドロップアウトして、平穏に暮らしたい」
俺は、ベリアルの遊んでいる左手首を掴んで言った。俺の言葉は、お前の言葉と違って、飾りでも遊びでもない。
「排除されることなく、3人でドロップアウト。これを目的にしよう。」
ベリアルと俺の目が合った。「力」のカードが宙に舞った。
「はーっはっは!なにを言うのかと思えば!あなたはもう少し、人を利用することを覚えたほうがいい…。いや、十分にアタシを利用する気なのカナ? いいデショウ…。前言の撤回は恥デス。アタシがそれを達成する手段を考えまショウ。大丈夫、時間がないのは百も承知…。そろそろ、ジョブクリエイターのところに向かいマショ?」
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