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インヴィ
街に着いたので、早速ギルドを目指した。まだFランクだからジョブも選べないけれど情報は仕入れておきたい。悪魔の酒場は黒の軍勢に属している者しか入れない。俺は酒場に入って、早速、掲示板をみた。
-初心者のための心得 ジョブ編-
ランクがDにあがるとジョブを選ぶことができます。基本のジョブには、ファイア、ウォータ、ゴーレム、ウッディ、メタルがあり、これらをバランスよく組み合わせてパーティを組むのが理想です。ジョブで得られるスキルはアビリティよりも強力なことが多いので、ランクが上がったら、さっそくジョブをとりましょう。ジョブはギルドで得ることができます。
-初心者のための心得 アビリティ-
ゲーム開始時から固有のアビリティが一つ与えられています。ランクが上がるとアビリティが強化されたり、セカンドアビリティをもつことができるようになります。討伐経験値が上位200人に入るとランキング入りとなり、敵味方問わず、Aランク以上のプレイヤーにおおよその位置が分かるようになりますので、ご注意ください。
そこまで読み終わった頃、後ろから声をかけられた。
「なんだおまえら、見ない顔だな?」
強面の大男だった。俺は、プイと俺の肩に顔をむけるロキにかわって、挨拶をした。
「はじめまして。はじめたばかりなので、色々教えてください」
「へえ…」
大男は、俺を見て、それからロキを見た。ロキは男から顔を背けるように俺の服を掴んだ。彼女の切り揃えられた銀の前髪が肩に当たった。
「おい、サタンさん呼んでこい!お前ら、勝手に帰るなよ?」
大男がそう言うので、俺たちはテーブルについて料理を頼んだ。サタンは七大悪魔軍の隊長の一人だ。会っておいて損はない。なにせ、このゲームの最初の目的は、七大悪魔軍に入って名をあげることだ。
血のワインという名のブドウジュースを飲み、哀れな子羊の火あぶりという名のステーキを食べる。罪深き収穫物という名のリゾットを食べて、デザートの聖職者の目玉ー悪魔の飲み物を添えてーが運ばれて来る頃、俺とロキの席に、緑の長髪の大男がやって来た。
「いやあ、どうもどうも!おれ、魔王です」
「え?」
「いやあ、君たち、固くならないで!俺一応魔王だけどさ、ほら、ギルドマスターみたいなもんだから!」
「はあ…。」
いきなり魔王がでてきた。サタン軍団長じゃないのかよ。魔王は陽気な調子で喋りだす。
「それでね!是非君たち2人には魔王直属の護衛軍に所属してもらいたいんだよね!」
「いや、俺たち、まだ駆け出しですから。もうちょっと、自分のペースで世界を見て回りたいんですが」
「あははー!ちゃんと初心者向けの指導するよー!安心して?それにそれに!天使軍の勧誘、最近流行ってるんだって?あっぶないよねー。もう、あいつら、黒の軍のプレイヤーを勧誘するなんて、違法ギリギリ、非道だよ!そういうときはさ、肩書きってめっちゃ役にたつのよ!名刺見せなくっても、装備につく、魔王直属の刻印!それ持っていたら勧誘なんてこないから!んもー、おれ、新米さんって守りたくってしょうがないのよー!」
魔王はこちらのテーブルに身を乗り出し、人差し指を顔のまえに出して、満面の笑みを浮かべた。
「ってわけで!けってーい!魔王直属護衛軍、入隊おめでっとー!うえーい!乾杯しよう乾杯!マスター!ビール、酒場全員に運んで!!はやくはやく〜、領収書は魔王軍でよろしくね!」
こうして俺たちの入隊は決まった。魔王護衛軍は宿泊施設も決まっているらしいので、宿を探す必要もなかった。
夜も更けた頃、強面の大男が魔王の私室をノックした。
「お邪魔いたします。」
魔王は椅子に腰掛けて1人でチェスをしていた。
「ご苦労、インヴィ」
「あは」
強面の男性は黒髪のセクシーな女性の姿になった。
「危なかったですね。」
「ジョーカーは厄介だよ。でも、もう、こちらの勝ちは決まった」
「ふふ」
魔王・ルシファーはチェス盤の白のクイーンを手にとった。
「ここまできたら、どうとでも動ける…。くだらんゲームもそろそろ終わりだな」
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