ルシファーの口上

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ルシファーの口上

天使軍は酒場の入り口近くに固まっている。数十人、いや、100人くらいいるかもしれない。 「ふん、ただでさえ悪魔軍は壊滅状態なのに加えてジョーカーがこちらにいるんだ。情報もいくらでも手に入る。年貢の納めどきだな」 「粋がるねえ、天使くん。でも、ジョーカーは天使軍だけの味方ってわけじゃないしね。怒らせたら、白の軍を世界ごと滅ぼしちゃうかもしれないよね♪」 ルシファーは階段を降りながら、天使軍の金髪と話している。俺は初めに酒場で会った強面の男の近くにいた。この男のそばにいれば、なんとなく、大丈夫な気がする。 「ふん、お前の首をいま狩るんだから、関係ない。」 「天使くんはずいぶんもったいぶるねえ。バトル仕掛けるならさっさとやればいいのにさ。それにしても、君だれ?軍団長のケルビムは?」 ルシファーは首を傾げた。魔王の首を穫るっていうなら、それなりに有名なプレイヤーが来たのかと思ったが、そうではないようだ。 「ふん、ケルビム団長が私で十分と」 ルシファーはへえ、と言いながら、天使軍が大勢いる入り口近くに歩いてきた。つまり、俺たちのいる方だ。 「7大軍を3人失い、小勢でこそこそ逃げ回っていた魔王ルシファーにチェックメイトを決められる…。天使軍ケルビム隊きってのルーキーであるこの俺が…」 「ふうん、王手を決められるのはどちらかな?」 魔王は笑って、剣をふるった。 6つの剣が6方向に飛ぶ。それが、ロキの周りを囲んだ。魔王がロキに対してバトルフィールドを仕掛けた。白と黒のチェックが、床に広がる。 そして、魔王は…ロキを押し倒し、ロキの口を塞いで胸に剣を宛てた。その反動で、ロキのマントは床におちた 「これが俺の本物の剣。これでこの子を刺せばゲームオーバー。魔王特典で、味方でも殺していいことになってる」 魔王は俺を見ながらこう言った。 「この子が死んで困る人は全員、動かないでね?」 俺は焦った。 「待って、なんでパートナーの俺がバトルに参加できないんだ?」 「ふふ…」 強面の男が髪の長い女になった。やたらと露出が多い衣装を着ている。彼女は妖艶な声で言った。 「なんでって…魔王ルシファーが、ソロプレイヤーだから、相手もソロとして相手することになるに決まってるじゃない?」 「ソロ…?」 そのセクシーな女性、エンヴィは、俺の疑問に答えた。 「いまはソロなのよ…。色々あって…」 「そうじゃなくて!あの!なんでロキを…!」 エンヴィは俺の唇に人差し指をあてた。 「黙ってみてなさい…魔王の完全勝利を…」 天使軍が動揺しだした。 「あの女の顔…!」 「マズいぞ!」 「いいか。お前ら、手をだすな」 「な…でも!魔王の首を穫れば…!」 「魔王が別のプレイヤーと戦闘中なら、俺たちはあれが終わるまで戦えない!」 サタン軍団長が先ほどのエースを名乗る金髪に対してバトルフィールドを仕掛けた。ルシファーは天使軍の動きを睨むように俯瞰している。 「あの娘が殺されたら世界が変わるぞ!手を出すな!」 「な…じゃあ俺はどうしたら!」 「運が悪かったと思って諦めるんだな?」 "地獄直行コース" サタン軍団長は、手に持っていた鎌で金髪を狩って、こう言った。 「もともとケルビムはあいつを捨て駒にする腹だったんだろう…かわいそーに。…天の使いってのは残酷だね」
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