36.【晴/恋人デート3/3】本編完結

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36.【晴/恋人デート3/3】本編完結

 はだけられていた上着は大きすぎたせいか、いつの間にか脱げ落ちてしまった。だから中途半端に脱がされたズボンを、中にわだかまる下着ごと蹴り落としてしまえば一糸まとわぬ姿になる。 「景久君も脱いで」  大きな手のひらであちこち触られながらもねだってみれば、彼はがばりと身を起こして上着を脱ぎ捨てた。  障子紙を透かす街明かりに浮かびあがる彼のシルエットに目を奪われているうちに、また抱き寄せられる。熱っぽい舌に首筋から胸を辿られて、知らず声が漏れた。  ほぼ脱がされていたことからも分かる通り、すでに一通り触られたり舐められたりしました……どんな事をするのかある程度知識はあったものの、実地は吃驚の連続ですね。現に今も、景久君は俺の後ろに指を差し込んで来ている。  一応お風呂で洗いはしたんだけど自分じゃ浅く指一本入れるのがせいぜいだったから、なにかが入り込んで来るなんて初めてで、反射的に力を込めてしまう。 「痛い……?」  それを誤解して動きを止める景久君。 「大丈夫」  違和感があるだけで痛くない。というか、お願いだから気にしないでどんどん進めちゃって。だってその方がきっと気楽だよ。  景久君はローションを足しながら慎重に俺の身体を拓いてくれて。あまりのもどかしさと恥ずかしさに気がくじけそうになれるけれど、彼の大きさを考えると仕方がない。  興味があったから見たし触らせてもらったけど――それ以上に見られたし触られちゃったよ――、俺のと全然違うんだよ。一番吃驚なのはそれだよ。単に体格と個性なの? それともアルファだからなの? 倍は言い過ぎだけど心情的には倍以上違うく思えたあれ……あれを挿入するのだと思えば、慎重になるよねそりゃ。  でもこうなんか、作業感じゃない? 景久君こんなんじゃ楽しくないのでは……。 「ね、」  次があるならお風呂でローション入れる所まで自分でやらなきゃ、と決意しながら、俺は仰向けから身を起こす。 「晴?」  俺の動きに従って指が引き抜かれていく。俺は景久君の足の間に入り込むと、彼のものに手を伸ばした。……やっぱりさっきよりも柔らかくなってる。そのことに焦燥を感じて、それに指を絡めてしごき始めた。 「晴、なんで」 「俺も景久君に触りたいもん」  俺の言ったのは本心からだったけれど、景久君に退屈されたくないっていうのが本音だった。男オメガなんて発情期以外は普通に男だから、……手間だし楽しくないよね。  だから、景久君のをしごいてその先端をぺろっと舐めてみたりしながら、手を伸ばして自分で穴を拓いてみる。気付かれないように、お腹側からこっそりと。こうやってほぐして、そのうち乗っかって挿入()れちゃえばいいんじゃないかな……。 「は、晴……ッ」  舐められて、景久君がびくっと腿をふるわせる。あは、かわいい。その反応に気を良くして、俺は先端をぱくりと咥えこんだ。さきっちょをちゅっと吸ったりぺろぺろ舐めたりしてたらしょっぱいものが滲んできて、それもすすり上げながら、自分の穴の方もなんとか頑張って――ってやってたら、 「わ」  先端から唇を離した隙に、腕を引かれた。ぐるりと視界が回転し、布団の感触を背中に感じた――と思った瞬間に、後ろにぐいっと指を突き立てられた。 「――ッ」  驚きに息を飲めば、今度は俺のを掴まれる。 「ひゃ…ッ、ちょ、」  根元をがっちりと押さえ込まれながら、景久君の口の中に収められるそれ。ぬるく濡れた感触にぞくりとすれば、熱い舌に舐めあげられる。しかもそれだけじゃなくて。穴に突き立てられた指が内部を激しく出入りし始めたんだ。  ガツガツとリズミカルなそれが、ぐっと曲げられて俺の身体の中を探り始める。内側から身体を揺さぶられるという初めての感覚に驚いているうちに、その指がある一点をかすめて。 「き、ゃあ……⁉」  自分でもどん引きするような悲鳴じみた声を上げてしまった。変な声。無様じゃん恥ずかしい……!  なのに景久君の指の動きは止まらず、ずっとそこばかりを狙って叩いてくる。トットットットって。俺はそれに合わせて恥ずかしい声を上げちゃうしぎゅんって前を反り返らせてしまうし。 「ゃ、やめ……! あ、あ、あッ……ぁ、や、や――!」  中を容赦なく刺激されながら反った前をしゃぶられて、俺は耐えることが出来ずに出してしまった。――そう、景久君の口の中に。 「ゃ、やだああ……ごめんなさいごめんなさい……」  とんだ粗相だ。許されざる失態だ。なのに景久君と来たら、泣きじゃくる俺が見てるってわかってるくせに、飲んだんだ! 「ぎゃあ、なんで……っ」  返事は特になかった。それどころか、俺がイっても内側に残ったままだった指がまたしても暴れ出して。 「ひゃあ、や、だぁ、抜いて……っぇ……!」 「抜いたら俺の挿入()れられないぞ」 「だめっ、ちゃんといれなきゃだめえ……」 「だったらほら、もっと奥まで」 「ん……」  あの気の狂いそうなポイントを離れた指が、奥の方まで伸ばされる。  自分の内側が、じん、とひりつくような熱を持ち始めているような気がした。ぞわぞわするしびれが景久君の指先から俺の身体のあちこちへと放射されているように感じる。 「やだ、へん」  じくじくとうずく熱を持て余して腰をよじると、すぐに引き戻された。 「変じゃない。きっとそれが『きもちいい』ってやつなんだろ」  断言。最初の頃のおっかなびっくりな景久君は何処に行ったのさ? 「きもちくないぃ……」 「イったのに?」  指の動きに合わせてぷらぷら揺れる俺のの先っちょを棒アイスみたいにしゃぶりながらそう訊いてくる。 「だって、だってっ」  わかんないけど勝手に勃つし勝手に出ちゃったんだもん。 「今も勃ってるだろまた。これが『きもちいい』って感覚なんだよ。そう覚えろよ」 「……ん」  そこまで強く言われるとそうなのかもって納得しちゃう……ていうか、きっとそうなんだろうけど。ただ俺が漠然と想像していた『気持ちいい』って感覚よりも数倍鋭くて激しかっただけで……。  今度は奥の方を広げられながらだったから、さっきみたいに強制的にいかされることはなくて。でも景久君はまるで口淋しいとでもいうように、戯れに俺のを舐めたりしゃぶったりしてくるものだから、暴発しないように堪えるのが大変だった。やめてって言ってるのに全然止めてくれないんだもん。なんか二回目の押し倒しから、ひとが変わったみたいに強引じゃない?  うん。でも、嫌じゃない。むしろこのくらい強引に進めてもらえる方が、恥ずかしさも申し訳なさも吹き飛ぶから気楽だ。  それで、ぐりぐりと奥をいじる景久君なんだけど、たまにビリビリくるあそこ――多分前立腺ってやつ――を突いてくるからその度に喘がされて、それにつれてお腹の内側がさざなみのような熱を折り重ねていって。景久君がやっと挿入に取りかかった頃には、俺は感じすぎて結構わけわかんなくなってた。 「……っ」  それでもやっぱり初めて受け入れるそれは大きくて――。ゆっくりとはいえ体内を切り進んでくる圧迫感に、俺は息を詰める。シーツを鷲づかみながら唇を噛んで耐え、細く息を吐く。 「……晴」  深く長い溜め息を付きながら、景久君が身をかがめてくる。抱き込んでキスをしてくれるので、俺は彼の首にすがりついた。 「はいった……? ね、ぜんぶちゃんと入った?」  俺にキスをする合間に、景久君は首を振った。 「やだ、なんで⁉ 全部いれてよ……!」 「晴、最初からそんな無理する必要――」 「だって、だってちゃんと全部いれなきゃ、景久君、俺のにならない……」  要するに俺は不安なのだ。こじらせた片想いが長すぎたから。好きだって言ってくれた景久君を信用していない訳じゃないけれど、与えられるものは全部与えてきちんと彼を掴んでいないと怖いのだ。 「……この先をこじあけるのは俺だって怖いんだぞ」  うわずった声で言いながら、景久君が腰を動かす。突き当たったような感覚に当てられて、俺はひぐっと息を飲んだ。なに、そこ――。 「や、な、なに――……?」  未知の恐怖に思わず逃げを打とうとした俺を押さえつけた景久君は、突くというよりは揺さぶる感じで腰を使い始めた。 「ひッ」  さっき指でガンガン突かれた時以上の衝撃だ。景久君の切っ先で突き当たってる所を抉られる。今までとは比べものにならない深みを揺さぶられる衝撃に、俺は身体をふるわせることとなった。びりびりだがぞくぞくだか良く分からない感覚が怖くて、すがるものを求めて景久君にしがみつく。 「や、ぁ、かげ、ひさく……ッ、や、ぁあ……!」 「晴――晴」  景久君も名前を呼んで抱きしめてくれて。 「晴、あぁ、かわいいな……、すっごいかわいい」  何回もキスをしてくれながらそんな風に言ってくれて。  かわいいなんて……そんな風に思ってくれているんだ……。  熱にうわずったみたいな声がかすれて色っぽくて、なのに切実で、 「かっこい、い。景久、くん、かっこいい、よ。だいすき」  だから俺も堪らなくなって気持ちを伝えて。 「俺も、晴、だいすきだ。かわいくてたまらない」 「ん……、あ、ッぁあ――――!」  景久君に、ものすごく愛しい、みたいな言い方をされて胸がきゅうんってなる。そしたらなんか身体中が敏感になったみたいにぶわってなって、中を抉られるのも抱きしめられるのも、肌に落ちる景久君の汗さえも全部に感じ入っちゃって……ひときわ高い声を上げて絶頂しちゃったみたいなのね、俺。  景久君もそれを追うみたいにして、低く呻いて射精してた――それを理解した時に、すっごい幸福感に包まれてべそっと泣いてしまった。  だって、俺の中でイッてくれたんだよ? こんな幸せなことってある?  結局全部入ったかどうかは分からなかったけど、それでも、その事に大満足したのだった。  その後は緩い感じにいちゃいちゃして、お風呂に入って二人で抱き合いながら眠って――明け方まだ暗いぐらいの時間に目覚めたら、景久君が「いい匂いがする」って俺の首筋に鼻をうずめてた。 「誘引フェロモンの薬切れちゃってるから、それかなあ」  ってぼんやり答えたら、 「もっと嗅ぎたい」  って言い出して何故か朝から二回目をすることに。俺の身体は昨夜の余韻を残してまだ柔らかかったみたいで、案外すんなり繋がれた。寝起きで頭も身体もぼけてたのと、一回目をちゃんと出来たっていう自信からか、俺もかなり気持ちよくなっちゃって、一回目よりも断然喘いだ。とても気持ちよかったです。  景久君は俺の誘引フェロモンの匂いが好きみたいで、ずっと嗅いでた。噛まれちゃうのかなってちょっとびびっちゃう勢いだよ。まあプロテクターがあるから、噛んだとしても彼の歯の方が心配になっちゃうんだけどね。  こんな感じで、小五ではじめて出会った俺たちは、その六年後の高二で両想いになりました。  結構こじらせたしすれ違ったけれど、これからはちゃんと気持ちを伝え合っていけたら良いなあと思います。  剣道もライバルじゃなくて、全国優勝を誓う盟友になった俺たち。一緒に手を取り合って、前に進んでいきたい。  とりあえず俺は、ずっとずっと、景久君の事がとても大好きです! (あっぱれ!/おわり) ※今後はこのまま後日談(体育祭とかの年中行事をやりたいです)を書き連ねて行く予定です。後日談の最後に三年生での全国大会を持ってきて終了です。 ここまでお付き合い下さった方々、ペコメを下さった方々、スターを下さった方々、本当に有り難うございました。
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