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翌年の9月の十五夜
明くる年の9月の十五夜。ばあちゃんは特別に張り切って3種類の団子をつくってくれた。15個も積み上げられた団子は大変に豪勢で、中学に上がった俺は、それをじいちゃんの墓に持って行くことになった。
俺はどうしてもウサ子に何かお礼が言いたくて、ウサギの柄の便せんに手紙を書いて、皿の下に置いておくことにした。
「ばあちゃんが、月のウサギにお裾分けしたいと今年はたくさん作ってくれました。ヨモギもあんこも、ウサ子の好きな、きな粉もあります。ウサギさん、どうぞたくさん食べてくださいね。もしよければ、月に住む家族の分も持って帰ってください」
そんな願いが通じたのか、翌朝になると皿は空っぽになっていて、その下に蕎麦の柄の手紙があった。それには下手な字でこう書いてあった。
「ごちそうさまでした。どのお団子もとっても美味しかったです。いつまでも元気でいてくれますように祈っています。月の小リスより」
それを持って帰ってばあちゃんに見せると、婆さまはゴードゴード、と言って泣いていた。
次の年も、その次も、ばあちゃんは9月の十五夜に15個の団子をつくって、俺はそれを墓にお供えした。不思議なことに、毎年、皿は空になり、蕎麦の柄の手紙が置いてあった。それがばあちゃんに宛てられたものだと気づいて、俺は中身を見ずに、ばあちゃんに渡すようになった。
家から遠く離れた高校に通っているときに、ばあちゃんが亡くなった。ばあちゃんが78才のときのことだった。
ばあちゃんの葬式のとき、たしかに、銀色の風が何かを持って行ったのを感じた。もしかしたら、ばあちゃんの魂だったのかもしれない。
俺は、ばあちゃんが死んだ後も、たまに9月に田舎の家の方に寄って、団子を墓に供えることにしている。
ばあちゃんの墓参りは、なんとなく、9月の十五夜が相応しいような気がするのだ。でも、ばあちゃんが死んでからは、ウサ子が団子を食べに来なくなった。ちょっと寂しいけれど、ウサ子の家が金持ちになって、ひもじい思いをしなくてよくなったのなら、それは良いことだと思う。
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