私の光

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「ど……どうして? お姉様はこの国を愛しているでしょう? 政治の学びも欠かさなかった。武術も、舞も……」 「そうよ、舞。私はね、舞で国を回って、たくさんの人を笑顔にしたいの。世界を見たいの」 「私はずっと、お姉様のことを信じてやってきたわ。お姉様のようになりたい、と。いつか一緒に国を導いていきたいと」 「ありがとう、サーシャ。あなたには、重荷だったかしら? それだけが心配だったのよ」 ユーリは切ない瞳でサーシャを見つめる。 「……いえ。でも……この国は、鉱石や宝石の資源が豊富ですから、他国から狙われることも少なくありません。ちょうど1年前も、他国から攻め込まれそうなところをお父様の指揮の元なんとか守れたばかりです。私の力では……」 その時、部屋の戸がノックされた。 「サーシャ王様、アルベルです。約束の時間より少し早いですが、大臣がお呼びです」 その声をひっそり聞き終えると、ユーリは振り向きサーシャをまた抱きしめた。 「サーシャ……ごめんなさい。会えて良かったわ。私は、世界一の踊り子になる。だからあなたは、ここを世界一住みやすい国にして。また、きっとどこかで会いましょう」 そう囁くと、ユーリはゆっくりと身体を引き離した。 「ありがとう、私の大好物」 そしてレーズン入のクッキーを頬張り、颯爽と窓から飛び降りて去っていった。
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