霊媒

3/9
前へ
/264ページ
次へ
やがて皮膚は変色のみならず皮が剥けて、じゅくじゅくと爛れるようになった。 そして身体が妙に重く感じる。 新婚の廣川さんにとっては、この症状はとても耐えられるものではなかった。 夫も心配してくれたが、当初の幸せな空気など消え失せてしまった。 専門医を紹介してもらい検査を重ねたが、そこでも結局原因が判明しない。 廣川さんは塞ぎ込み、毎晩泣いて過ごした。 この話を聞きつけた親戚の叔母が、廣川さんに拝み屋の北畑さんを紹介したという。 叔母の話では、北畑さんは四国でもけっこう名の知れた人らしい。 失せ物探しや憑き物落としが得意で、過去多くの人が世話になっているという事だった。 廣川さんは半信半疑だったが叔母の強い勧めもあり、一応会ってみる事にした。 彼女の新居を訪れた北畑さんは物静かな初老の男性で、純朴そうな顔を見た廣川さんも何となく安心した。 リビングのテーブルを挟んで向かい合って座り、廣川さんの話を一通り聞く。その間、北畑さんは彼女の背後に何度か視線を向けた。 その後、北畑さんはぽつりと言った。 「憑き物だね」 数日後、改めて祈祷をやる事になった。
/264ページ

最初のコメントを投稿しよう!

709人が本棚に入れています
本棚に追加