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数日後に彼の職場兼自宅を訪れた。
実際にお会いしてみると、廣川さんが言っていた通りの温厚な人物だった。
歳は六十代で、短く刈り込まれた髪は全て白くなっている。
とても質素な身なりで小柄だが、何か力強い存在感を放っていた。
私が名刺を渡しながら挨拶すると目を細めて笑う。
二時間ばかり話したが怪異を蒐集している私からすると興味深い話ばかりで、それらを原稿にしても良いか相談すると、照れくさそうに頭を掻きながら頷いた。
その後も中国、四国方面に立ち寄った時は北畑さんを訪ねるようになった。
彼も忙しいのにも関わらず度々取材に応じてくれた。
北畑さんは少しも驕ったところがない人だが、淡々と語る話は背筋が寒くなるようなものばかりだった。
ただ、多くの相談者の問題(霊障以外のものも含めて)を解決していく北畑さんの拝み屋としての実力が話の端々から感じられた。
この人なら丑蔓家の問題についても頼めるのではないか。
だから、私は静恵さんに北畑さんをぜひ紹介したいと提案したのだ。
静恵さんは始め困惑した様な表情を浮かべたが、しばらく思案すると一人では決められないから夫に相談すると言った。
だが、まんざらでもないようだ。
私としても北畑さんが来る事によって事の真相が分かれば、もっと面白い原稿が書けるのでは、との打算が無かったわけでもない。
でもこれは丑蔓家にとっても悪い話ではないはずだ。
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