322人が本棚に入れています
本棚に追加
それから勇者カズキとアストレアは平原を通り抜け、今は砂漠地帯を放浪していた。
絶賛迷子である。
地図も持たないで、知らない場所を探索すると必ずこうなる。
俺はアストレアはこの地方に詳しいと勝手に解釈しており、それも原因である。
アストレアは事情があり、しばらく街にも行っていなかったため、街への道も忘れたらしい。
しばらく街へ戻れなかった事情を聞こうとしたら、何故かローリングピンで殴られて蘇生されていた。
これ以上彼女の詮索は危険だ。
仕方なく、道なりに歩いたが、砂漠で迷い、引き返そうにも気が付いたら、自分達が何処を歩いているのかもわからず、結局この様だ。
俺たちはもう何週間も砂漠を放浪している。
生きているのが不思議で、アストレアに聞いたら、俺は既に砂漠で30回は死んでいたらしい。空腹からの餓死と、脱水症状からの熱中死。砂漠のモンスターに食われる。
死亡原因を聞いたら、そんな内容がほとんどだった。
「なあ、アストレア。俺は死んで体力満タンで生き返るからわかるんだけどよ。
アストレアはどうして平気なんだ!?!?」
アストレア自身が死んだら俺も彼女も生き残れないはず。
そしてもし、アストレアが何週間もの間、砂漠地獄で一度も飲み水、食べ物を摂取して無いのであれば、その生存能力は明らかに人間離れしている。
いや既にあの時、トロールを倒した地点で彼女は普通じゃないと思ってはいた。が、これはさすがに何かおかしいと俺は感じ取っていたのだ。
「急にため口になりましたね。勇者様。まあ、その方が私としても話やすくて良いのですが。
私はちゃんと水分補給と食事を毎日必要なだけ摂っています」
いったい何処にそんなもん。
そして俺にも分けてくれないとは!!!
この時だけはすごいキレた。
食べ物の恨みは大きい。
顔も変わっていたと思う。
そんな俺の不機嫌な態度を見て何か思ったのか、彼女が話し始める。
「うふふふ!。そんなに機嫌を損ねないで下さい。勇者様。私は何も食べ物を独り占めするために隠しているような事はしていません」
ふっ・・・どの口が言うんだ、どの口がああ!
「そうですね。どう説明すれば良いでしょうか。死骸から剥ぎ取って、加工して食べています。
私、こう見えても、サバイバル術には詳しいのです。そなえよつねに、が私のモットーです」
ははーん。なるほど、わかったぞ。
俺を囮にして倒したモンスターをこのドSシスターは食べていたんだ!
それは俺が食べられない訳だよ。
俺は囮になってモンスターに食われて死んでいる。その時にこのけちんぼシスターは俺がモンスターに食われた後に、その隙だらけのモンスターを倒して、料理して食っていたんだ。
ちぇっ!!何が食べ物を隠してないだよ!結局俺は食べれる所か食べられてるだけじゃねーか!!!
弱肉強食という奴ですね、わかります。
最初のコメントを投稿しよう!