1話  古寺 × 強くなりたい少女 × 傷だらけの師匠

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1話  古寺 × 強くなりたい少女 × 傷だらけの師匠

  (静かだ、、、空気が澄んでいる、、、 体が少しずつ浄化されていくようだ、、、 ここはどこだ、、、 おれは、、、やはり死んだのか、、、) 男は夢から引き戻されるようにゆっくり目を開けた。 視界が広がるにつれ周囲を見渡すと、広い殺風景な客間に眠っていたことがわかった。 そして、外はまだ明るく、障子窓の隙間からは柔らかな日差しが差し込み、外の木々が風でざわざわと揺れる音がした。 男は起き上がろうとしたが、体に力が入らない。 どうにか片腕を布団から出し、天井に向かって持ちあげると、その手を握りしめた。 「どうやら、生き延びたようだ・・・」 男が呟くと、縁側からかすれた老人の声がした。 「旅のお方、目を覚まされましたか? 体の具合はどうですかな? 傷はまだ痛むでしょう・・・」 男がハッとして声のする方へ頭を動かすと、そこには背中を丸めた和尚が座禅を組み、縁側から外の景色を眺めていた。 「ここは、、、どこですか?」 男には記憶のほとんどが残っていなかった。 それを手繰り寄せるかのように、失礼を承知で和尚に確認した。 「ここは、田舎の山奥にある古い寺じゃよ・・・」 「古い寺?どうして私はここに?」 「一緒に住んでいる私の娘が、傷だらけのあなたを連れてきたんですよ。 何も、覚えておられませんか?」 男はぼんやりとした記憶をたどっていく・・・ 「娘・・・?」 そのとき、ひとりの小さな少女の顔が思い浮かんだ。 「あ!死にそうな俺に容赦なく水をかけたあの子か! ハハハー本当に助けてくれたのか!」
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