バルコニーでの告白

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バルコニーでの告白

雨が好きな理由を挙げなさい ひんやりしてて気持ちがいいから 風景がいつもと変るから 音がきれいだから 嘘はよしなさい 雨が好きな理由を挙げなさい だから、 雨を通した風は夏の暑さを吹き飛ばす 雨の景観はしっとり落ち着いている ぴたぴた ぽたぽた ぱったぱた 嘘はよしなさい もう一度言います 雨が好きな理由を挙げなさい だから・・・・・・ 魔女にかけられた魔法 それは無意識下の自分を呼び起こす 世にも怖ろしい魔法 とぅるるんたんたん とぅるるんたんたん ぱんぱからんらん ぱんぱからんらんらん 日に煌めく雨粒は トタン屋根にあたり微細な屑へ 僕がいるのは二階のバルコニー 古い南国風のバルコニー 扇風機が頭上でくるくるる 宝石の屑はここまでこない 激しく打ってもそこで落ちる 僕の上にはトタンの廂 プラスチックの扇風機 遠くで大工がかんかかかん 激しい日常の波を眺める 母胎の赤ちゃん  激しい爆撃を聞く シェルターの市民 弱肉を感じる イソギンチャクのクマノミ 雨を好きだという バルコニーの僕 これが理由です これが理由です 正直に言えば これが理由です ようやく納得した魔女 本当は知ってたくせに 気味悪いその引き笑いに 僕はコーヒーを一口呑んだ
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