悲しい世界

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「………そう言えば俺、友達いないな…」 (まぁ…こんなに前髪長くして性格も分からないようなやつに声かけるやつなんて居ないか…) もう既に入学して1ヶ月が経っていたが元々社交的でない上に初めてのバイトに戸惑ってそれどころでは無かったのだ。 「友達作るのもめんどくさいけど…独りも嫌だな………」 「環樹!1人で何をぶつぶつ言っている!」 「…あ、すいません……」 授業中だということをすっかり忘れてしまっていた。 (あぁ…いきなり怒鳴るなよ……頭いてぇ…) 「はぁ……」 自然と出たのか、それともわざとなのか俺は先生に聞こえるような大きなため息をついた。 俺が、バイトしているのは学校から歩いて5分くらいのファミレスである。 この店の店長は、初めてバイトをする俺に対して丁寧に仕事を教えてくれるしめんどくさい感じでは無かったから楽に働けそうだなと思っていた。 なのにーーどこの店にも迷惑客というのはやってくるらしい。 「ねえねえ、ちょっとそこの若い店員さん」 「はい、なんでしょうか?」 「あのさ、これ髪の毛だよね?入ってたんだけど。こんなの食べれるわけないよね?」 「…すいません。今すぐお取り替え致します。」 (いや…食べれるわけないとか…自分の髪の毛じゃん…さっき入れてんの見ちゃったし。) 「あ、いいのいいの!その代わりお代タダにしてよ」 (やっぱりこれが目当てか…) 「あ…えっと………」 「え、何?こんなのにお金払えって?!失礼過ぎね?」 「お客様、大変申し訳ございません!本日はお代は頂きませんので」 「お、店長さん??やっぱベテランは違うね」 店長が助けてくれたおかげでその迷惑客はやっと帰って行った。 「…すいませんでした。助けてくれてありがとうございます。」 「なんかごめんね?まだ初心者だってのに。時々くるのよねーあーゆう客。あ、もしかして今日のでメンタルやられちゃった?」 「いえ…大丈夫です。」 「良かったぁ。次も私が守ってあげるからね!」 「あ、ありがとうございます。」 逆に、こんなに優しい店長がいるバイトを見つける方が難しいだろう。 (しかし、あんな漫画とかにありそうな客…ほんとにいるんだな…) バイトが、終わった頃にはもう既に8時を過ぎていた。
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