悲しい世界

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…ガチャ 「ただいま…」 おかえりと返す声もなく、家の中は静まり返っている。 これが、日常だ。 誰もいないリビングに入ると、テーブルの上には、夕食が用意されていた。 バイトが終わるのは、8時過ぎだが家に帰るまでには、40分以上かかる。 9時就寝と言う厳しいルールがあるこの家で起きているのは俺、1人だけだ。 1人でご飯を食べるのは全く寂しくなかった。 いや、正確にはもう慣れてしまった。 この時間に帰ってくるようになったのはつい最近だが小さい頃、義母たちと一緒にご飯を食べていても何故だか孤独を感じてしまった。 明らかに自分だけが違う世界に居るような、 自分が家族の一員として認められていない、 そんな感覚だった。 「ごちそうさまでした…」 小声でそう言うと食器を片付け自分の部屋へ向かった。
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