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泊まりに行ったその日、彼はいつも通り、私を迎え入れてくれた。
優しくて、格好良くて、私を大好きだと想ってくれてるのが伝わってきて。
あぁ、会えないのだって、今になって考えてみたら、ちゃんと理由があったじゃないか。
予定がすれ違ってしまったり、彼の2か月の短期留学期間があったり。
なのにどうして、私は不安になっていたんだろう。
何故だろう、安心したかったはずなのに。
彼が大好きで、彼も変わらず私を想ってくれていると実感したら、私の中で、罪悪感だけが膨らんだ。
彼の熱に身体を委ねながら、アイツのことを頭の中で考えてしまう、アイツにキスされたことを思い出してしまう。
そんな自分が嫌で、嫌で、嫌で…。
なんで、アイツのことが、頭から離れないんだろう。こんなに彼のことが、大好きなのに。
彼の家から帰る電車の中で、私はただただ、声を殺して泣いていた。
久しぶりに彼に会って、いつもなら、充電完了~!なんて、幸せいっぱいのはずなのに。
一週間ぐらい、そのまま悶々としていた。
この時、サークルの女友達に相談したのは間違いだったと思う。
その子は私の彼のことは知らなくて、アイツのことは知っている。
大体どんな意見がもらえるか、想像つくよね?
結局もやもやが大きくなりすぎて、私はすぐに限界が来てしまった。
弱くて弱くて、ダメな私。
…気が付いたら、彼に、メールしていた。
『会って、話したいことが、あるの。』
彼は、次の日、すぐに来てくれた。
私は夜までバイトがあったから、バイト先まで(親の)車で迎えに来てくれた。
バイトが終わると、ご飯を食べに行って、ご飯の後は、そのまま車で、あまり人の通らないところへ。
静かで暗い道の端に車をとめた彼は、しばらく何も言わなかった。
沈黙が落ちるけれど、私も、何も言い出せない。
話したいことがあるといったのは、私なのに。
しびれを切らしたように、彼がこちらを向いた。
「話って、…何?
俺は、別れたく、ないよ。」
あれ、どうして、別れるって。
…そうか、別れた方がいいのか。
大好きだけど。大好きなのに、アイツのことを同時に考えている。
私、最低だ。
そのモヤモヤを、いったい誰に相談しようとしていたのか。
このまま、こんな気持ちのまま、彼と付き合っているのは、いけない事なのかもしれない。
彼に対して、とても失礼なことだ。
私も、こんな気持ちで彼と一緒にいるのは、辛い、か、ら…
ぼろり、と涙がこぼれた。
当たり前のように慣れた手つきで、彼の腕の中に引き寄せられる。
ぎゅっと抱きしめられたら、更に涙が溢れてきてしまった。
「どうした、何があったの?」
彼の声は、どこまでも優しい。
最低な私のことを何も知らずに、こんなにも優しくしてくれる。
…心が、痛い。
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