第1章 遊女の島

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** 「うーーーーむ」 ちゃりん、ちゃりん。 宿の部屋の床に銭を一枚一枚並べては、腕組みをした空穏が首を傾げる。 ここに宿泊して三日目、船賃のために貯めていた路銀の残りがじわじわと尽きかけているのだ。 塩竈は呆れた目をして土間から顔を出し、サラが済まなそうに上目遣いをする。 「あ、あたしなら大丈夫ですから、野宿だって何だって、構いませんから!」 白い髪に白い肌、淡黄色の目も愛らしい幼な子が声を上げれば、 「そうはいかん。妙な輩に襲われたらどうするのだ」 「大丈夫です、あたし人ではないし」 「そういう問題ではない」 ピシャリと言われてサラがふくれる。 確かにサラは人ではないものの、以前はごく普通の人間だった娘である。今でこそ因果の果てにあやかしのような姿をしているが、特別な攻撃ができるわけでもない。
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