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「あの部屋から変な獣の声がすると騒ぎになってもよいのか。お前を置いてやってもいいと言って下さる宿など滅多にないのだぞ。わたしらは野宿でも構わんが、この子はそうはいかん」
すうすうとよく眠る愛し子の額を撫で、難しそうに眉根を寄せる。
サラは命こそ取り留めたが、体力はあまりないらしく、無理をするとすぐに眠くなってしまうのだ。
「わかっておりますて」
蹄で器用に腹を掻く塩竈の背後から、ザァザァとよく降る雨の音が聞こえる。
初めてこの島を訪れた昨日は驚いたものであった。
ここは女ばかりのーーもちろん男もいないわけではないがーー圧倒的に女の多い、仔細ありげな島なのである。
人の噂にそのような島があるとは聞いたことがあるし、古い書物の中にもそれらしき記事を見たことはあった。
だが現実目の当たりにした衝撃は、まさに百聞は一見にしかず。
それに心なしか島の女たちは軒並み男好きのする顔立ちをしているように見える。
すれ違う者みな肌が白く、目鼻立ちが整っていて、身持ちもすっきりとした小綺麗なのである。
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