第1章 遊女の島

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その上やたらと宿屋が多い。 いったい岩石ばかりのこの島に、取り立てて目を引く物といったら先に挙がった巫桜くらいのものである。 にも関わらず、島の大半の産業は宿屋のようなのだ。 農地と思しき土地はほとんど見かけない。 景観の美しい岬もなければ、名物もない。 岩盤ばかりでろくに草も生えない、およそ人の住むべき土地ではないような気さえする。 見所もないのにそこら中に宿の看板がひしめいて、そこら中に美人がうろついている。そういう島なのである。 昨夜は着いてそうそう大雨に降られた一行は、体力を消耗したサラを抱えてたいそう困窮した。 無数の宿を片っ端から叩けば一つくらい受け入れてくれる先が見つかるかもしれない。 『小生は外でもいいですよ』との塩竈の妥協に頷きつつ探し回っていると、幸いパッとしない一件が、 「納屋に近いお部屋で宜しければ、お牛様もご一緒にどうぞ」 いうので、一も二もなく甘えたのである。
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