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「失礼いたします」
断りを入れ、娘の小袖と下衣を解く。あらわになった裸体をまじまじと診ると、肝臓の辺りが真っ青に見えた。
そう、見えたのだ。
空穏には、病の根源を視覚的に見る能力がある。根源はふつう黒いが、症状が浅いと青や紫に見えることもある。まだ致命的な状況ではない証といえた。
(肝臓かーー)
肝臓は、損なうと胆汁の分泌に異常が現れ、黄疸や黄水の嘔吐、食欲不振を引き起こす。
蔵血量が不足し、夜盲、四肢の屈伸困難の原因にもなるのだ。
その肝血の不足は爪に現れる。
娘の冷えた指を取れば、やはり爪の色素は薄く、もろく、艶が失われていた。
患者の母によれば、罹患した者たちは前後不覚に陥り、目は見えているのかいないのか、口もきけずに一日のほとんどを寝て過ごすのだという。
薄い粥ならば起きている間に口から流し込んでやれるが、早晩、栄養失調に陥るのは明らかである。
「こん娘も、おとついまではピンシャンしとったんじゃ。なんもわからん、他のもんとおんなじじゃ。急に倒れてそれっきり。ろくに飲まず食わずでこんでは、そのうちみんな死んじまう。こん娘も、今に……」
言い淀む母の背中で娘の祖母がすすり泣いた。
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