第1章 遊女の島

8/13
前へ
/110ページ
次へ
(ふむーー) 真綿で首を絞めるような病である。噂以上の深刻さに肝が冷えたが、それが心因性であるにせよ、外的要因であるにせよ、症状には必ず原因がある。 空穏は黒衣の袖を捲り上げ、細帯でたすき掛けに縛った。 隆々とした腕があらわになる。 難しいほど燃えてくるのは、救世の志やら医師の意地というよりも空穏個人の性格によるところが大きい。 空穏はまず、みぞおちからやや右に逸れた右乳房の下に三本の指を置き、ゆっくりと圧した。 それからその指を下に移し、またゆっくりと圧していく。 嫁入り前の娘のそのような部分に、あまつさえ親の目の前で触れるのはたいそう気が引けるのだが仕方ない。 圧していく指が脇腹まで抜けると、今度はうつ伏せにして、右肩胛骨の下を丹念に押し続ける。 こうすることで筋肉のコリがやわらぎ、鬱血を解消する。血の巡りが良くなることで、脈と呼吸が整ってくるのだ。
/110ページ

最初のコメントを投稿しよう!

72人が本棚に入れています
本棚に追加