第1章 遊女の島

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第1章 遊女の島

千年桜が一度に散った。 散っただけなら花に風、浮世無常の儚さと、詠まれて終わるまでであったが。 渾名に遊女の島と呼ばれるこの絶海の孤島の、累々とした岩山の頂に立って、下界を見下ろす(かんなぎ)(ざくら)は並の古木ではない。 その根は頑強な岩山をも貫き、僅かの養分も逃さじと深く深く地中にまで根を下ろしていると考えられている。 それ故にか巫桜はその体内に特別な力を持ち、並の桜が十日で花散らす運命を、実に二月(ふたつき)持ちこたえるのだという。 神懸かりの千年老桜。 それが今年は、僅か一日ばかりで散ってしまったというのだ。 さらに不可解なことには、散る間際の桜吹雪を島中の誰も見ていない。 いったい桜はどのように花を散らせ、こんなにも短い春を終えたのかーー。
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