2話

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「かんぱーい!」 「……ん」 店に入り個室に通された私達は、一先ずビールで乾杯する。 雨が少し強くなっているのか、店の中にも雨音が微かに聞こえていた。 「何だか不思議ですね」 「?」 「だって、ちょっと前まで泉さんと二人で食事するなんて想像もしてませんでしたから」 「ああ」 「泉さんって、誰に対しても無口なんですか?」 私の質問に首を傾げる彼。 「例えばご家族の方とか」 「……まあ」 「恋人にも?」 「……いない」 そっか、いないんだ。そうなんだ~…… ……ん?私今、彼女いないって聞いてちょっとホッとした?いや、まさかね。 こんなに不愛想だと女子は近寄りがたいだろうし、彼女居なくても無理はないのかもしれないなあ。 「……そっちは?」 「私ですか? 残念ながら、もう4年程いませんねえ。出会いもないですし」 「そう」 ……うん。何だか慣れてきたな。泉さんとの会話にも。 お互い無言で、運ばれてきた焼き鳥を口に入れる。 無言でいてもちっとも嫌な感じがしないなんて、この人は不思議な人だな。 それ所か居心地がいいぐらい。そんなの、今まで感じた事なかったかも。 「今日はありがとうございました。傘本当に助かりました」 「いや……こっちこそ、ありがと」 「泉さんが良ければ、また一緒にご飯行きましょうね!」 一瞬驚いた様に目を見開いた後、泉さんが小さく頷くのが見える。 それをしっかり確認した後、駅の改札を抜けてホームへと向かった。
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