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3話
泉さんと居酒屋へ行った数日後。
お昼の時間になり、ご飯を買うために私は外に出ていた。
夏の気配を感じる強い日差しが照り付ける中、近くのコンビニへと足早に向かう。早く買って、快適な温度の社内に戻りたい。
買い物を終えて店から出ると、戻る途中に見覚えのある背中が見えた。
もしかして、泉さんかな?
ひょろっと背の高い彼は、肉体労働だからか背中は割としっかり広め。
細マッチョっていうのかな……多分脱いだら意外と筋肉あるタイプ。
前方を歩く泉さんの手には、コンビニの袋が下がっていた。
泉さんも今からお昼ご飯かな。会社とは違う方に歩いてるみたいだけど、どこに行くんだろう?
ちょっと気になった私は、彼の後を追うことにした。
少し歩いて辿り着いたのは、近くの噴水広場。その奥に広がっている芝生の上に、彼は徐に座り込んだ。
ここで食べるのかな?
丁度木陰になっている場所で、袋からおにぎりを取り出した泉さん。
丁寧にお手拭きで手を拭いた後、何の表情も顔には出さずパクパクと食べ始めた。無心におにぎりを食べているその姿が、ちょっと可愛い。
「泉さん、私も一緒にいいですか?」
「!」
あ、驚いてる。いつも無表情だから、逆に変化が分かりやすい。
小さく頷いてくれた彼の隣に同じように腰を下ろそうとすると、何故か手で止められた。そして、制服の上着を脱いだかと思ったら、そのまま芝生の上へ……?
「え?」
「……服汚れる」
「泉さんの上着が汚れちゃいますよ?」
「別にいい」
「でも……」
いいのかな、本当に。
いつまでも迷っていると、グッと手を引かれてそのまま上着の上に座らされてしまった。
「あの……」
「……時間、無くなる」
「あ、はい。そう、ですね……」
早く食べないと、昼休憩の時間が無くなるってことなんだろうけど……
ほんのりと彼の顔が赤くなっている気がするのは、どうしてなんだろう。
――どうして、さっき彼に握られた手が熱いままなんだろう。
相変わらず無言の空間で、私は確かに早まる胸の鼓動を聞いていた。
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