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こうやって自分のことを考えていると、先輩のつぶやきが耳に入ってくる。
「でもさぁ、私の作り笑いや無理して話し合わせている所とか、夏目ちゃんにはすぐ分かっちゃうんだろうね。まぁそれはそれでいいのかもしれない。嘘がつけないなら、ありのままの自分でいるしかない。それでも仲良くできるなら、それに越したことないもんね」
「そうっすねぇ……」
先輩の言葉にドキリとする俺。
――夏目琴葉の前では嘘がつけない。
そういえば彼女に、俺の嘘に気付いているか確かめようと思っていたのだ。それがラブレター紛失事件のせいで結局聞けずじまいに終わり、今に至っている。もう今更尋ねる勇気は俺には無かった。
ならば、俺は嘘をつき続けようと思う。彼女が何も言ってこない限り、この嘘は心の中に仕舞っておこう。
そして、
俺は考え続けよう、彼女に一体何が出来るのかという事を。だからその答えが出るまでは嘘をつき続けるのを許してほしい。
それが、俺が俺に科した、罰なのだから。
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