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俺は今だ笑っているタツヤの肩を抱いた。
「次は何して遊ぶ?」
「もう結構いい時間だよ」
「もうちょっとぐらいいいじゃん」
「……まぁそうだね」
夕焼け色に染まる公園。そこにいるのは俺とタツヤの二人だけ。だけど全然寂しくない。ふと振り返ると、夕日に照らされ伸びる二つの影が楽しそうに寄り添っている。そんな夕焼け小焼けが響く公園の景色を俺は鮮明に覚えている。
――そして、
俺は今、何かから逃れるかのように物陰に隠れていた。階段の踊り場から少しばかり身を乗り出し廊下の様子を探る。まるで逃走中の犯人のようだ。だがその例えは言い得て妙かもしれない。俺は見た目がこんなのだから犯人っぽいし、あいつは警察官、しかもキャリア組の優秀な刑事がよく似合うから。
小学生時代のかくれんぼは惨敗だったが、今はまだあいつに見つかっていない。
(よし、行ったようだな)
誰もいないことを確認し、俺は立ち上がった。
「何してるの?」
「うわぁ!」
急に後ろから声をかけられた。バクバクしている心臓を押えながら振り返ると、そこに三谷先生がいた。不思議そうな目でこちらを見てくる。
「べ、別に何でもない。先生こそ何してんっすか?」
「保健室の忘れ物を届けにね。ベッドのところにハンカチが置いてあって。最後に使った子の物だろうなって思って持ってきたんだけど、その子、双子なんだよね。どっちだったかなぁって思って……。五月ちゃんと葉月ちゃんっていうんだけど、どっちがベッドで寝ていたのやら覚えてなくて」
「別にどっちでもいいんじゃないの。どっちに渡しても持ち主の元には戻るんだから」
「あぁそうか、日野くん、かしこい! 言われればそうだよねぇ」
今気づいたというような反応をする先生に俺は呆れるしかない。気付くのが遅すぎるだろう。すると三谷先生は、話の矛先を俺の方に戻してきた。先生なりに気になっていたらしい。
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