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「お客さんたち神次郎村へ行くのかい?」
うどん屋の大将は自慢の手打ちうどんを出しながら、年齢も性別もちぐはぐな一団に尋ねた。
「ええ、大学のゼミ研究の一環と少々のバカンスを兼ねて」
尾灯大学の准教授として民俗学の教鞭をとっている蒲生幹雄が代表して応えた。
蒲生は40代にしては童顔で、増えだした白髪が少々アンバランスではあるが女子大生からの評判は概ね良好である。
独身であることもそれを後押ししている。
「えー幹ちゃん、遊びに来たんじゃないの?」
「松本さん、卒業論文は書いてもらわないと単位をあげられないんだよ?」
幾分人の目を引く大きなサングラスを頭に乗せ、ふわりと巻かれた茶色い髪をいじりながら松本智恵が口を尖らせる。
フランクな性格と言えば聞こえはいいが、人によっては“厚かましい”という印象を与えるだろう。
「智恵ちゃん一緒に頑張ろうよ」
松本とは一転、黒髪を控えめに後ろで一まとめに括っている大野里美が微笑みかける。
松本と大野、見た目も性格も対照的な二人だが、気づけばウマが合うのか大野が松本の舵取り役を担っている。
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