灰になるまで

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「さ、食べたら早速参りましょうかね。私が足を引っ張るのは目に見えていますから」 うどんを食べ終わって一息すると井上が不自由な身体を支えるために杖を突いて立ち上がった。 よく手入れのされた飴色の木製の杖が床を突く音が響く。 ーーーーーーーーーー ”最寄りのバス停”に降りて暫く歩くと一気に道幅が狭くなった。 蒲生は井上に、「ほんとに大丈夫ですか」を長く丁寧な言い換えで訊ねた。 「よく歩いた道ですから休憩しながらいけば大丈夫です」 「そう言えば彩ちゃん、村って電話は繋がるの?」 「繋がりますよ」 その言葉に松本はほっとした表情を見せた。 舗装されていない石や岩が転がっている緩やかな登り坂を、身体は不自由だが案内役の井上を先頭に進む。 さて、この一行が神次郎村に行くことになったのは民俗学専攻の蒲生ゼミで、研修を行なおうとなった際、井上が自身の出身である村を紹介したことが始まりだ。
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