灰になるまで

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蒲生は先のとおり女子学生にそれなりの人気がある。 よく容姿を褒めてもらっている松本は隙あらば蒲生と、と思っているが大野はそれは流石に無理筋ではないかと思っている。 蒲生が他の女子学生を褒めると、あからさまに不機嫌な顔になるし、一度二度は他の女子学生と揉めたこともある。 自分の目が届く範囲で蒲生と若い女が二人っきりになるのも我慢ならないらしく大野もその例外ではない。 「井上さん、この時期に祭りがあるっていうのは本当なんですか?」 「ええ、ちょうどオトーケ様の時期ですから」 「オトーケ様?」 松本は蒲生との会話に入る。 「本当はオトロケ様だったんだけどね。私の村は昔、綿花の栽培を中心に生計を立ててね。 同じくらいに何度か酷い病が流行り出したの。それでオトーケ様をお祀りしだして病気が流行らないようにしてたの」
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