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『転勤になった』
そう最愛の君に言ったのは五年前。
それから俺達は遠距離恋愛をすることになった。
愛の巣を構えた、二か月後の事だった。
午前零時前。最終に飛び乗って最愛の人が待つ街に降り立った。
そしてマンション近くの公園の公衆トイレに駆け込み、ドラキュラのマントと牙を装着している。マントの下がスーツなのは許して欲しい。
一刻も早く帰りたいが最愛の君に喜んでもらえるならなんだってしようとネットで注文した物を抱えて帰ってきた。
学生の頃はこんなイベントは流行っていなかった。聞いたことはあったが自分には関係ない事だと思っていた。
しかし尚之と付き合い始め、彼がイベント事や記念日を楽しむ嗜好を持っていることを知り、自ずと透は意識するようになった。
だからと言って華美なことはしない尚之は、ただ自己満足だとイベントを楽しむ。透に強要したりはしない。
季節や祭事を大切に暮らしていると言ってもいいのかもしれない。
季節の変わり目は玄関の狭いスペースにディスプレイをし、記念日にはテーブルが華やかになる。
控えめな尚之ならではの楽しみ方だと思い、一緒に楽しみたいと思うようになっていった。
離れて暮らす尚之は今夜も一人でハロウィンを楽しんでいるはずだと、嬉しい知らせと共に尚之を驚かそうと企んでいた。
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