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「俺のいない間に、こんな格好で他の男と笑い合って楽しそうにしているなんて許せないなぁ。俺といる時より楽しそうだったし」
尚之が声を上げて笑うなんて姿はあまり見たことがない。物静かで微笑んでいる姿が目に浮かぶ。
遠距離になりこの五年の間に尚之に触れたのは数えるくらいだ。どこででも仕事はできるからと着いてこようとした尚之を止めたのも透自身だ。物理的にも無理があったのだが。
このマンションを購入したばかりだということもあったが、いつ帰ってこれるかもしれない僻地に日中一人にしておくことも嫌だった。
ここで待ってくれていると思えば、頑張れた。それに顔を見ることは今の時代方法はいくらでもある。
どこにいても寂しい想いをさせるのなら馴染みのある場所で待っていてほしいと思ったからだ。
何が間違っていて何か正しいのかなど、どちらを選んでも後悔は湧いてくると透は思っていた。永遠に離れる訳ではないと何度も噛みしめて。
だからこの五年、寂しかったと会いたかったと尚之に言わせたい。こんなシュチュエーションはハプニングだがこの際これを利用しようと透は目論んだ。
そして、明日からはまた一緒に暮らせるんだと、尚之の安堵と喜ぶ顔が見たい。我儘なやり方でも尚之に自分が必要だと言わせたかった。
「そんな…ゲームですよ…それに透さんといる方が楽しいに決まってる…」
内心踊り出しそうな告白にほくそ笑み、もっともっとと尚之に詰め寄る。
「こんなエロい格好して?この男とゲームして楽しかったんだろ?」
男とゲームではなく男はアニメで架空なのだが、そんなことはどうでもいい。透以外と楽しむのは解せないと子供じみたことを言っているのは百も承知だった。
「…そんな…だって…ハロウィンだし…」
シュンとして瞳を潤ませている尚之は可愛い。こんな茶番はバガげていると怒らないのが尚之らしい。
それだけ久し振りに会う恋人に必死なのだと愛おしさが込み上げる。
「どんな風にその男と遊んでたか見せて?」
凍りついた表現は胸を締め付けるが、抱きしめたその額にお願いするようにキスを落とす。
尚之から離れマントを広げながらソファに座り足を組んだ。
その様子を目で追いながら諦めたように溜息を吐き、汚名を晴らそうとヨガ用マットの上に立って手元のスイッチを押した。
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