5 絶対なんてない

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「大福〜!会いたかったよ〜!」 もふもふしたカラダを撫で回しながら、今にもとけてしまいそうな程の満面の笑みを浮かべる彼を見て、心がじんわりと温まる。 咲間さんとの2度目のデートは思いの外早く実現できた。 できたというよりは無理やりに予定を合わせたと言った方が正しいけれど。 1年ぶりのデートはやっぱりこの場所で。 あの時は「コタロー」の正体を知るきっかけになったけど……「こうたろう」の正体も、もっと詳しく知る事ができるのだろうか。 知りたいような知りたくないような…… 咲間さんの笑顔に癒されつつも、例えようのないモヤモヤとした気持ちが胸の中で渦巻いていた。 「ひーなくん。大丈夫?」 「え?」 「何だか上の空だなって思ってさ。」 「いえ、そんな事ないですよ。」 「そう? なら良いんだけど……今日、無理させちゃったんじゃないかと思って。」 「全然!全く無理してないです!もう楽しくて楽しくて! 大福〜!咲間さんの膝ばっかりじゃなくて俺の所にもおいでよ!」 慌てて両手を広げ、咲間さんの膝にちょこんと乗っかっている大福に視線を移した。大福は黒々としたつぶらな瞳でジーッと俺を見やると、プイっと顔を横に振り体を丸めた。 「何だよ。おまえ本当に咲間さんの事が好きだな……」 そう言葉にしてすぐに胸の奥がチクリと痛んだ。 自分自身に言っているみたいで。 「大福〜そんなに僕の事が好きなの?」 はい。大好きです。 「離れたくないんだねぇ。」 はい。ずっと一緒に居たいです。 「僕も君が大好きだよ。」 嘘だ…… 「いっ……」 「え? ……どうしたの? どこか痛いの?」 余程辛そうな顔をしていたのだろうか。咲間さんは膝に乗せた愛しいもふもふから視線を外すと、心配そうに俺の顔を覗き込んだ。
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